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雑食ヲタのけいぽ日記

【BTS】凡人は王者に抗えないし、王者は凡人の波に抗えない【Interlude : shadow】


BTS (방탄소년단) MAP OF THE SOUL : 7 'Interlude : Shadow' Comeback Trailer

 

 

 

なにぶん天邪鬼なもので、視聴したのはトレイラーが出てからだいぶ経った頃だったのですが、見たら見たでやっぱり感嘆のため息を吐かずにはいられませんでした。ばんたんって凄いなぁ。

 

 

主人公を務めたSUGAは、強烈なラップとジェスチャーを披露しながら、防弾少年団のメンバーとして収めた成功による責任感と恐怖を率直に表現した。

カムバックトレーラーにはステージを披露するSUGAと共に、SUGAの様々な自我と欲求が擬人化された群衆が登場する。群衆の中のSUGA、鏡に囲まれたSUGAなど、視覚的効果を極大化したシーンを演出するためにモーションコントロールカメラ、VFX(視覚効果)など特殊な撮影機器と効果が使用された。
特に、SUGAにゆっくりと飛び込んでくる群衆の姿を超高速のカメラとグリーンスクリーンを活用して劇的に表現し、映像への没入度と緊張感を加えた。

「Interlude : Shadow」は、Emo Hip Hopジャンルに基づき、雄壮でありながらもおぼろげな雰囲気を与える曲だ。2013年9月に発売したアルバム「O!RUL8,2?」のイントロである「O!RUL8,2?」の楽器をサンプリングして作った。

防弾少年団、カムバックトレーラー「Shadow」の主人公はSUGA…迫力ある映像が早くも話題 - MUSIC - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle

 

  

私はラップに詳しくないのでここは適当に読み飛ばしていただいて結構ですが、ユンギの「自分の黒い部分を固めて、それを生搾りしたラップ」は昔から変わってないなぁと思いました。本来それがラップというものなんだろうけど、ユンギの書く詞って、その本質よりもっと取り繕いがないと思います。格好つけようとか、もっと驚かせるリリックを混ぜようとか、そういう見栄が一切ないイメージ。貶しているわけでなく、例えとして浮かぶ言葉が「掃き溜め」。そう、本当に掃き溜めに近い。Twitterの裏垢みたいな。ラップは、言いたいことを音とリズムに乗せて吐き出す「ツール」という感覚がする。

 

 

裏垢って基本的に、仲の良い人とか近しい関係の人しか相互にならないじゃないですか。内容に難があるって自覚してるから、信頼できる人だけに知ってもらう。ユンギにとってこの歌詞が「内容に難がある」かどうかは知る由がないのですが、私は少なくとも果てしない挑戦だなと震えてしまいました。挑戦というと少し違うか。本来の姿を今もなお守り続ける姿勢に感服しました。この内容を世界中のファンに向けて発信するのは、相当勇気のいることだろうから。ここまでオブラート無しのド直球だと、掃き溜めというより忠告、拒絶にも見える。風刺動画、センシティブモーメントでもある。裏垢の鍵を外して呟いたらバズってしまった・・・みたいな地獄を見ている気分。

 

 

 

f:id:Leonana110111:20200125161653p:plainサビ前。大量の黒い影がユンギの肩を掴んだ時の、溜息。あれが間違いなく彼らの本音なんだろうなと思うと、私はつくづくアーミーじゃなくてよかったな、と思ってしまうんですよね。自分が生涯かけて応援しよう、追っていこうと決めた人からいよいよ「これ以上光らせないで、今はもう跳ぶ事が怖い」と言われたら私はどうすればいいかわからなくなってしまいます。一応ユンギペンなんですが、彼を生涯追っていく自信がないなと感じた理由はこれだった事を思い出したのでした。そうだよね、貴方はそういう正直な人だよね、と。皮肉にも、だからこそ私はユンギが好きなのですが。

 

 

それから動画を見て痛感したのは、ユンギの表情と視線。これが良い。またまたこんなこと言って怒られないか心配ですが、彼の、世界中のあらゆるものを汚らわしく思っているような目が好きです。何もかも面倒くさくて、やる気が起きなくて、嫌なことは常に降りかかってきて、お先真っ暗でやってらんねぇっす。・・・みたいな顔をする人だなぁというのが最初の印象だった気がする。グクちゃんのようにキラキラした陽のオーラがなくて、ナムさんみたいに誰かの背中を押すようなラップとも違っていた。だから私はユンギペンになったんだった。アイドルとはかけ離れた人だと思ったから、そんな人がアイドルBTSのメンバーとして世界中から愛されてるんだと思うと、凄く感動したんです。

 

 

『Interlude : shadow』のユンギは、久々にそんな姿を覗ける作品だったように思う。というか【MAP OF THE SOUL : 7】の雰囲気を知らしめる重要な1stトレイラーを担当したことに凄く納得がいった。前作【MAP OF THE SOUL : PERSONA】のトレイラーを務めたのはナムさんだったけど、彼のどこか紳士的で隙のないポジティブラップは『Boy with luv』の平和感とよくマッチしているから。先行配信された『Black swan』を聴いて、今回の新盤はユンギの色とよく合ってるんだろうな、と確信するとやっぱりちょっと楽しみ。因みに2ndトレイラー『EGO』は2/3公開です。

Black Swan

Black Swan

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

そんな事を考えていたら、動きの細部一つ一つがやっぱり好きで、ユンギ格好いいなぁと呑気に動画を楽しんでいる自分もいた。彼の表現の仕方というか、動きのクセが好きなんですよね。ステージに走り込んできて立ち上がる時のモーションとか、唇に人差し指を添えてしーってしてる時の首の傾げ方とか、ラップする時片方の口角だけを吊り上げるのとか、萌え袖に隠れた指先まで力が入っているラップモーションとか・・・。数えきれない。優勝です。ユンギさんほんま・・・カッケェな・・・;;;;;

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少しお花畑に寄り道してしまったけど、結論私はこの作品が凄く好き。で、同時にやるせなさを感じる。何がやるせないかって、彼らは一つの作品で数え切れないほど沢山のファンを増やせる力を持ってるのに、悲痛な声は何度叫んでも彼らを救ってくれない事。私のように、ユンギの言葉に戸惑う人もいるだろうけど、その苦しむ姿をも愛おしく思ってしまう人はきっといて。この曲を世に出したところで、ばんたんのサセンは聞く耳持たないだろうなとか。現状何も変わらないだろうなとか。レベルの高いラップだとか、安定の作曲能力だとか、そういう評価ばかりが世に出回って、更に高みへと登って行くことは避けられないだろうなとか。彼らが本当に目を向けて欲しかった物は伝わらないまま流れていくのかなとか。そうしてまた孤独に生きていくのかな・・・とかとか。

 

 

そういう事を想像してしまうと、王者は案外弱いものなんだとハッとさせられる。動画に出てきた人影は目も鼻も口も耳もないマネキンのようだったけど、だからこそ厄介(言う事を聞き入れる耳がない、話し合う口がない、迷惑に思っている事を認識する目が無い)なんだと表現するには持ってこいの演出だった。

 

 

『Interlude : shadow』。それは、優れた王者であっても、数に押されてしまえば抗えない事。

そして私は私で、ばんたんという王者の音楽に抗えない凡人である事。