君の唇に 敬礼

雑食ヲタのけいぽ日記

幸せ

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心の病というのは、案外簡単にかかってしまう。小さなきっかけひとつであっさりと。私がそうだった様に彼も・・・というのは分からないけれど、それなりに汲み取れることと言えば、「精神的な病は酷く酷く辛い」ということだけである。

 

 

ウォノぴが抜けた時、私は彼らがアイドルとして生きていくことを諦めて欲しくなかった。どんなことがあってもステージに立ち続けて、痛みも悲しみも歌とダンスに乗せて私たちにぶつけて欲しかった。その姿を見てまた私たちは勇気をもらって、愛を知って、彼らを支える努力を惜しまない様になる。そういう関係を築いていきたいと思っていた。

仲の良いモンベベちゃんが言う「メンバーがこんなにも傷付くくらいならアイドルをやめてほしい」という意見が怖かった。それが大多数を占めてしまったら、私の人生からもねくちゃんがいなくなっちゃうんだから。そんなの耐えられない。私の生き甲斐を奪わないで。・・・そう思っていたのは、ほんの二ヶ月前。

 

 

このニュースを知った時に、私は泣いた。職場で休憩していた時だったけど、トイレに駆け込んで声を殺して泣いた。ただただ辛くて悲しかった。全てが無に還ってしまって、気づけば「もうやめて」と祈る様に携帯を抱え込んでいた。

 

 

ここからは想像になる。何の根拠もない、聞くに足らない持論である。私が認識している限りのイ・ジュホンという人間の話だから。

彼が私たちに向けて放った数々の格言は、一つ残らず嘘ではないし虚言でもないと思う。全て本心であり、自分の言葉で一人でも多くの人を幸せにしてあげたいと思っていたと思う。でもそれは、本当に120%の自信で構成されていたんだろうか。不完全な自分に向けての言葉でもあったのかもしれない。分からない。そんな事は分りっこないけれど、今の彼の病を思うとそう考えてしまう。

 

 

自分の出来ない様なことを、大勢の人の前で「出来ます!」と胸を張って言うのはとても難しい。同時にストレスだ。言葉はどの書類よりずっと簡単に手続きが出来て、それでいて絶対的な契約書でもある。「あの時の言葉は嘘だったの?」という言葉は平気で人を殺せる。他人の重圧はどのプレス機よりも人を簡単に押しつぶす。そして自己嫌悪は、どれだけ視力がいい人間も一瞬で盲目にする。絶対に解けない鎖にがんじがらめにされた時、人は死ぬことを選ぶ。

 

 

彼のいろんな顔を知るたび、私が決まって口にする事は「この人できない事ないの?」だった。完璧すぎて怖い人。それが私の中のイジュホンだった。ウォノぴがいなくなってしまって直ぐの音番。一位を取った時、「絶対に言いたかったことがあります。」と前置きして、私達に希望をくれたのも彼だった。言葉に力がある人だと思う。説得力があって、熱意があって、それを叶えてくれる力もあるから、皆が彼を愛したんだと思う。

 

 

その言葉の力が自分自身にも牙を向いた、と言われたら私は納得してしまうと思う。

 

 

 

 

 

 

私は、音楽を奪われるくらいなら迷いなく死を選んでしまう人間だけど、彼らはどうだろうか。アイドルは基本、なりたくてなる職業だ。もねくちゃんに限った話ではなく、今は辛くてやめたいかもしれないけど、初めは皆アイドルを夢見ていた。一握りだけが潜れるその門の前に立つために、あらゆる犠牲を払って努力してきたはずだ。

 

 

彼らは今、幸せを手に入れるためには「アイドル」を捨てるところまで来てしまっているのだろうか。

 

 

ウォノぴの言葉。「モンベベがいなかったら俺は抜け殻だ」というその言葉。聞いた瞬間に本心だとわかってしまった。だから辛い。私の中で音楽が全てで、それを失ってしまったら取り柄のない屍になるのと同じ様に。彼にとってはそれに全て捧げてきたから、本当にそれしかないのだと思う。失うのが怖いと泣いていた姿は、自分を見ている様で苦しかった。大好きな『Mirror』を聴くたび、彼が書いた「嫌いだ 自分が憎い」と言う歌詞が耳に残る。どんな気持ちでこの歌詞を書いたんだろうか。

 

 

ほにちゃんはどうだろうか。彼の幸せはどこにあるんだろう。分からないね。

 

 

 

 

 

 

 

ところで、離れる前にどうしても言いたい文句があって、何故ほにちゃん一人だけが活動休止なのか本当によく分からない。確かにアイドルは仕事だけれど、ここまでグループワークを極めた職なのだから、全員が休止するというのは決してイレギュラーな選択肢ではないと思う。与えられた選択肢を受け入れることが今は得策なのかもしれないけれど、これだけは本当に浅はかだと思わざるをえなかった。

 

 

精神的な疲労を抱えたメンバーが自分のグループにいる、という現実はそれなりに負荷がかかる。メンバー愛が強ければ強いほど、その負荷は膨らむ。自分がもっとサポート出来ればな。守ってあげられてたらな。そんな思いがまたメンバーを蝕んで、侵食する。パンデミックの様に負の連鎖が起こって、汚染されてしまう。

 

 

空白や不在に一番ダメージを覚えるのは、結局メンバーなのだと思う。だから出来るだけその空白を感じさせないで欲しかった。私たちにも、彼らにも。

 

 

 

 

全員が幸せに生きてほしい、という願いが一番難しい願いなのかもしれない。もねくちゃんもモンベべもスタシ関係者も、何なら名前を出してはいけない彼女らも、私は交わらない世界線であれば幸せでいてくれて構わない。芸能人だって幸せになれる世界はいつ出来るんだろう。誰も涙を流さなくて済む世界に行きたい。そこにたどり着くまでにアイドルをやめなければいけないとして、彼らが幸せを選ぶとしても誰も責められない。世界はいつも残酷だから。